それから近隣にはもう一つ、「忠臣蔵」で有名な
播州赤穂がある。赤穂観光のポイントは、赤穂城・大石神社・大石良雄宅址・花岳寺である。ここは有名であり、情報には事欠かない。書物もサイトも多い。だから、そちらを参照されたい。→
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「忠臣蔵」のヒーロー・大石良雄と宮本武蔵の共通点は何かといえば、それは、近世中期の十八世紀ころ、両者ともに演劇化されて英雄になったことである。「忠臣蔵」で敵討ちの定型ができたが、そのせいか演劇の宮本武蔵も、いつのまにか親の敵・佐々木巌流を討つという話になってしまった。
「忠臣蔵」の原型は事件直後の中村座が初演だが、寛延元年(1748)八月の、大坂竹本座の人形浄瑠璃「仮名手本忠臣蔵」(二代目竹田出雲・三好松洛・並木千柳作)が定型をつくった。その興行は四ヶ月におよぶ大当りとなった。そこで「仮名手本忠臣蔵」は、ただちに歌舞伎に取入れられ、その年の十二月から大坂嵐座、翌寛延2年3月には京都早雲座で上演された。江戸でも同年二月に森田座、五月に中村座・市村座と、三座揃って「仮名手本忠臣蔵」を演目に出すありさま、かくして三都の劇場はそろって「忠臣蔵」の競演となったという。
注目すべきは、この「忠臣蔵」の成功と同時期に、武蔵物の演劇化、歌舞伎や浄瑠璃の上演も盛んだったことだ。藤本斗文作・歌舞伎「仇討巌流島」(元文二年・1737年)、その後、浅田一鳥作・浄瑠璃「花筏巌流島〔はないかだがんりゅうじま〕」(延享三年・1746年)、菅専助他作・「花襷会稽褐布染〔はなだすきかいけいのかちんぞめ〕」(安永三年・1774年)等々が算えられる。
かくして武蔵物演劇は「忠臣蔵」と平行して連綿として続き、ともに近代へと手渡されたのである。
赤穂で食事をするなら、瀬戸内のうまいものを食べたい。和食では「
くいしん坊」、ちょっと値が張るがそれだけの値打ちあり(要予約)。それから何といっても赤穂城前のイタリア料理店「
さくらぐみ」、こちらは値段もリーズナブルでおすすめ。予約はとくに必要はないが、人気店なので、待ち時間を覚悟で行くこと。
赤穂土産はもちろん「
塩味(しおみ)饅頭」。小豆あんの甘さに赤穂の塩味を効かせたなかなか上品な味の茶菓子である。店はいろいろあって、それぞれ味もちがう。どれがおすすめか、となると、オーソドックスなところでは、「
かん川本舗」。しかし、元祖老舗の味にこだわりたい人には、「
播磨屋」である。