本書は全五巻からなる兵法書である。地(ち)・水(すい)・火(か)・風(ふう)・空(くう)の五巻である。この地水火風空は宇宙を搆成する五元素で、五輪ともいう。よって本書を「五輪書」と呼ぶのが通称である。周知の如く、地水火風空のパーツをもつ五輪塔というものが仏教にはある。
しかし、「五輪書」とは後人の名づけであって、武蔵をはじめ初期の門人等が、本書をそう呼んでいたのではない。「五巻の書」「兵書五巻」等々と呼んでいたにすぎない。したがって、我々が本書を「五輪書」と呼ぶのは、そうした後世生じた通称に従っているまでである。
さて、本書の条々は九十あって、前文後文を除き、おおむね一つ書きでそれぞれタイトルも付す。題名を一覧すればわかるように、地之卷は自序と地ならしの総論、水之巻は剣術の具体的な教え、火之巻は戦闘戦術論、風之巻は他流批判、そして空之巻は序文のみだが門流後生に宿題を与えるものである。
ここでは本書の総目次を掲示する。通読の便宜をはかるため、各巻条々に連番を付し、内容を示した。本書の内容索引として活用されたい。
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